キーキャップの本をチームで技術書典7に出した話。InDesignの話題中心。
目次
はじめに
チーム構成
・リーダー:1人
・執筆者:3人
・校閲:1人
・校閲・デザインFB・会場掲示物デザイン:1人
・本デザイン:1人
(たぶん)
担当した部分
私はメンバーが執筆し校閲された文章を本に印刷するデータに加工する、本周りのデザインを担当しました。
本データを作る上で重要な話
あとでも紹介しますが、本にするデータを作成するときは最初が一番重要です。
あらかじめ印刷所を決めるだけではなく、本の向き、綴じ方、モノクロ・カラーのページ、を決めた上で、印刷所のフォーマットに沿ってデータを作成する必要があります。
ここを怠ると、あとでとても面倒なことになるので気をつけましょう。
本を作る
今回の作成では、執筆作業とデザインは分離する形で作成しました。
別アプリケーションで作成することで、本のデータを作る時に、執筆者のことは考えずに自由なアプリケーションで制作が実施できるようになります。
今回はMarkDown(執筆)+InDesign(本のデザイン)で制作をしました。
InDesignを採用した理由
InDesignを採用したのは、私が一番使ったことがあって使いやすからです。
極端な話、パワポがあればなんでもできると思うんですが、使いやすさが段違いなので採用しました。
利点
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要素の厳密でかつ柔軟な配置が可能
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Illustratorやphotoshopデータとの連携が楽
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MarkDownとの相性が良い
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だいたいなんでもできる
欠点
Indesign自体は、細かなイラストなどを制作するのには向いていませんが、PhotoshopやIllustratorとの相性が良いので、ベクターでもラスターでも複雑なグラフィクデザインに対応することができます。
また、InDesignでは、テキストボックスをあらかじめ空やサンプルテキストを流し込んだ状態で用意しておき、原稿が完成したら後から流し込むということが簡単にできるので、自分以外が執筆している時は大変便利です。
原稿は期日に絶対やってこない
本番で印刷する原稿は、執筆されれば終わりではなく、校閲が入ってからの修正が入ってからの校閲…と執筆の期限が守られていても、想定外に修正ややりとりに時間がかかって遅れたりします。
私が大学のときサークルで冊子を作っていた時は、印刷をしないと間に合わない時間を過ぎてから原稿がやってきました。(その時は深夜に自宅のレーザープリンターで印刷して、気合で終わらせましたが…)
なので、原稿データはギリギリまでやってこない前提で動く必要があります。
InDesignは、レイアウトだけ最初に組んでおいたり、サンプルテキストを簡単に割り付けたりすることができるので、慣れれば簡単に本番原稿なきデザインができるようになります。
Git + MarkDown + InDesignの相性が良い
また、MarkDownとの相性が良かったのも、執筆者としても、本のデータ化(デザイン)を担当した私としてもとても相性が良かったです。
執筆者としては、markdownファイルの実態はテキストファイルですから、エンジニアが大好きなGitで管理すれば、データの共有や同期、差分の管理などが容易にできます。
テキストファイルベースなので、VimやSublime Text、メモ帳で編集することが可能です。
本のデータ化をする方としても、常に最新版をGitで追うことができ、校閲で変更された文章は、行単位でどこが変更されたかがわかるので、無駄に考えることなく都度修正をすることができます。
もしGitを使わなかったとしたら、やり取りをしてファイルを落として文章を差し替えすることになるので、「修正版キーキャップの歴史本文①(1).txt」とか、「old_修正版キーキャップの歴史本文①追加分(1)_____.txt」とか増えてきて、間違えて旧版のテキストを貼り付けたりしてしまいかねません。
MarkDownの文章をIndesignに反映するには、単にテキストをコピペするのもアリですが、pandocを使えば段落スタイル(見出しなど)の情報もまとめて反映させることができます。
pandocで出力される段落スタイルと文字の設定等を紐付けておくことで、完成原稿がやって来る前に、見出しや本文のデザインをしておいて、後から一発で反映させることが可能になります。
pandocはこちらの記事を参考にさせていただきました。
https://qiita.com/JHiyama/items/043a064a6eccf69c7636
※CUIツールなので、慣れてないと導入にやや気合いがいります。
pandocを使う上で一つ注意しなければいけないのが、MarkDownで画像を記述するとき事前に記述方法をすり合わせをしておかないと面倒くさいことになります。
というのも、通常の写真サイズのままInDesignに挿入してしまうと、ページに入りきらずに枠外へ行ってしまうので、画像サイズを小さく指定しておく必要があります。
データ作成するときの設定とか
InDesignで組むとき最初に悩むのが、レイアウトグリッドを使うかマージン・段組を使うかなんじゃないんでしょうか。レイアウトグリッドの方は文集のような規則的なレイアウトで文字を組みたい時に利用します。初期では縦組みになっています。技術書の場合、あまり和文等幅を使えないので使うメリットは少ないかなと思います。
一方でマージン・段組は比較的自由なレイアウトで文字を組みたい時に利用します。私は基本的にこちらの方を利用します。デフォルトだとまっさらですが、ドキュメントグリッドやカスタマイズ可能なベースライングリッドを活用することで、グリッドシステムを使ったデザインもできます。ちなみに、ベースライングリッドはオブジェクト吸着します。便利。
印刷所のデータ入稿で失敗した
私というか、私たちはここで大コケしました。
技術書や漫画など冊子類のデータを作り始めるときは、事前に本の向きや紙の大きさを決めます。しかし、印刷所によってそれぞれ細かい制約や対応しなければいけない項目があります。
私は以前チラシの印刷を業者に依頼したことがあり、そのときはトンボだけつければ大丈夫だったので、その感覚でろくに制約を確認せずにデータ制作を始めてしまったので、後が大変でした。
同じ印刷業者でも、印刷する種類に応じて、こちらで必要な対応が変わってきます。
今回印刷をお願いしたnikko-pc(http://www.nikko-pc.com/index/top.html)さんでは、冊子類を印刷するときは、ノンブル(ページ番号表記)が必須でした。デザイン上、ページの左右下に大事な写真を配置すると、ページ番号を(わざとページ番号をずらすのもアリかもしれませんが)載せなくてはいけなくなるので、あまりよろしくないな・・・と思いつつ配置する羽目になりました。
確かに、以前に我が家のレーザープリンターで冊子を数百部印刷した時も、途中ノンブルがあってもページを見失いかけたことがあったので、作業者の立場からしたら確かに必要だなと感じたました。
もしどうしてもつけたくない場合は、つくけなくても良い業者さんもあるとは思うので事前に調査と確認をとった上でデータを作り始めるのが吉だと思います。
その他注意事項
Githubでデザインデータを管理する場合、1ファイル100MBを超えると上限に引っかかってpushできないらしいので、ファイルサイズをそれ以下にする必要があります。
高画質な写真をIllustratorやInDesignに埋め込むと、一瞬で超える可能性があるので注意が必要です。埋め込まないほうが、写真の差し替えをする時などに自動で変わってくれるので便利だと思います。
さいごに
個人でいると、独力では本のデータを作れても本のコンテンツを作ったり、出店したりすることは難しいので、有意義な機会となりました!
アドベントカレンダー6日目の明日はint_sorarinuさんです!